『正欲』/多様性とは思ったより多様。

BOOK

2022年「本屋大賞」ノミネート作品。
昨今の”多様性”や”LGBTQ”なんてワードには結構敏感に反応して情報収集しているつもりでいたが、この作品に触れ、自分の想像力の乏しさに気付かされる。

タイトルの『正欲』の中には、同じ音の”性欲”を包括した、”本当に欲しい物”という意味を指している。
現代においてはSNSなどを通じて同じ志向の人を見つけることが容易になったが、”LGBTQ”を代表とするマイノリティは、太古の昔から存在したはず。
その人達の多くは同じ志向を持つ人を見つけられず、辛い思いで人生を過ごしたのだろう。
マイノリティの中でも多数派である”LGBTQ”ならまだしも、この作品に登場するような稀な志向を持った人たち同士が繋がるのはとても困難。
作中の”ダイバーシティフェス”もマイノリティの繋がりをフィーチャーしたものだが、”LGBTQ”以外にまで想像が及んでいない。

対象が”人”ではない性欲があるのか、
と多様性の多様ぶりに気づかされた。
自分が作中のマイノリティの立場なら、八重子たちの考えるダイバーシティや多様性の尊重なんて、
「何も解ってないのに軽々しく言うな」
「そっとしておいてくれ」
と感じるものなのだろう。

スッキリしない結末には賛否あると思う。
違った解釈のまま終わってしまった、こういう事件が実際にあるのだろうと感じる。

多様性の時代にマッチした、あらゆる可能性を考慮するときの考慮の幅が広がる作品。

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